JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

農地の借り主が耕作放棄。返還請求の方法如何

質問

 わたしは、農業委員会の許可をうけて、約40年前からAさんに畑を賃貸しています。Aさんは野菜畑として利用していましたが、5?6年前から作物を作らず、雑草が繁茂しています。畑を返還してもらいたいのですが、どのようにしたらよいでしょうか。

回答

 農業委員会(知事)の許可をうけて農地を貸した場合、その契約を解除したり、契約の更新を拒否するには農業委員会(知事)の許可が必要です(農地法20条1項)。
 
 農地法は、その許可基準として次の4つを掲げ、そのいずれかに該当する場合でなければ許可しないとしています。(同条2項)。

  1. 賃借人が信義に反した行為をした場合
  2. その農地を農地以外のものにすることを相当とする場合
  3. 賃借人の生計、賃貸人の経営能力等を考慮し、賃貸人がその農地を耕作することを相当とする場合
  4. その他正当な事由がある場合
 Aさんは5?6年前から耕作放棄をしているとのことですから、Aさんに特段の事情(例えば、耕作意思はあるのに病気のため一時的に耕作してないだけで、近い将来耕作可能となる)がない限り、①に該当すると考えられます(大阪地判昭50・4・28)。

 ですから、あなたは、農業委員会(知事)にAさんとの契約を解除することについて許可申請し、許可がおりたらAさんに契約解除の通知を発し、畑の返還を求めていきましょう。

 そして、Aさんが任意に畑を返還してくれればよいのですが、返還しない場合は、Aさんを相手方(被告)にして、契約解除を理由として裁判所に「農地明渡請求訴訟」を提起し、その判決にもとづいて強制的に農地の返還を実現することができます。

 そのような方法とは別に、あなたは、Aさんを相手方にして、裁判所に「農事調停」を申立てて解決を図る方法もあります。農事調停の申立てには、契約解除などについて農業委員会の許可を得る必要はありませんので、いきなり申立てることができます(民事調停法25条)。農事調停は、裁判官と調停委員(2名)が農地の専門家である小作主事の意見を聞いて契約解除が相当か否かを判断し、調停を進めてくれます(ただ、調停は話合いですから、Aさんと合意が成立しない限り解決はできません)。

 ですから、あなたがAさんから畑を返してもらえないときは、裁判所に農事調停の申立てをするか、あるいは、契約解除について農業委員会に許可申請し、許可を得た上でAさんに畑の返還を請求するか、のどちらかの方法を選択して農地の返還を求めるのがよいでしょう。

(弁護士 長島佑享)