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法律相談

亡き弟の借金を引き継ぎたくない ――裁判所に相続放棄の申立てを

質問

 遠方に住んでいた弟(次男)が亡くなりました。財産はなく、消費者金融から多額の借金があります。弟は妻はいますが、子どもはいません。母親は健在です。きょうだいはわたしのほか妹が2人います。亡き弟の借金を引き継がないためには、どのようにしたらよいでしょうか。

回答

 亡くなったあなたの弟さんには子ども(第1順位の相続人)がいないということですから、その場合の相続人は、妻(常に相続人となる)と直系尊属(第2順位の相続人)である母親の2人になります(民法889条、890条)。したがって、亡き弟さんの借金は妻と母親が法定相続分(この場合の法定相続分は、妻が3分の2、母親が3分の1です。民法900条)に応じて引き継ぎ、負担することになります。

 妻と母親が亡き次男(夫)の借金を引き継がないためには、相続放棄の手続きをとることが必要です。相続放棄の手続きは、相続人である妻と母親が亡き次男の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申し立て」(これを「申述」といいます)をします。この申し立ては、相続人全員(妻と母親)ですることも、一部の相続人(妻または母親)だけですることもできますが、申し立てしない相続人は亡き次男の負債を引き継ぐことになります。

 相続放棄の申し立ては、相続人(妻、母親)が被相続人(次男)の死亡を知った時から3ヵ月以内(これを「熟慮期間」といいます)にしなければなりません(ただ、3ヵ月では短かすぎて財産や負債の調査ができない場合には、この期間を延長してもらうこともできます)。

 相続放棄の申し立てをすると、裁判所は、相続人に相続放棄の意思のあることを確認した上、相続放棄を認める審判をくだし、「相続放棄受理証明書」を交付してくれます(通常、1、2ヵ月で交付されます)。この受理証明書を提示すれば、債権者は相続人が相続放棄をしたことが分かりますので、亡き弟さんの借金の返済を請求されることはありません。

 妻と母親が相続放棄をすると、妻と母親は初めから亡き弟さんの相続人ではないことになります。そうすると、亡き弟の兄弟姉妹(第3順位の相続人)であるあなたと妹さん2人が亡き弟の相続人になります(民法889条)。

 ですから、あなたや妹さんが亡き弟の借金を引き継ぎたくない場合は、妻と母親が相続放棄したのと同様に、あなた方があらためて家庭裁判所に相続放棄の申し立てをしなければなりません(妻や母親と同時に相続放棄の申し立てをすることはできません)。そしてあなた方がする相続放棄の申し立ては、母親(第2順位の相続人)が相続放棄したことを知った時から3ヵ月以内にしなければなりません。

 このように、相続人が亡き弟の借金を引き継がないためには、まず妻(常に相続人)と母親(第2順位の相続人)が相続放棄を行い、次いで兄弟姉妹(第3順位の相続人)であるあなた方が相続放棄の手続きをとることが必要です。


(弁護士 長島佑享)