JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

「入居者不明、明渡し求む―『占有移転禁止の仮処分を』」

質問

 アパート経営をしています。3年前に一室をAに貸しましたが、知らない間に入居者が何度も変わり、現在の入居者が誰なのか不明です。家賃も1年以上入っていません。契約を解除して明渡を求めたいのですが、誰を相手方にすればよいでしょうか。

回答

 借主A以外の第三者が居室を占有(居住)している場合、Aを被告として明渡裁判を提起して勝訴判決を得ても、その判決の効力はAとその家族などAの占有補助者にしか及びませんから、それ以外の理由で居室を占有している者を退去させることはできません。従って、貸主は、借主Aと実際に居室を占有している者を被告として明渡裁判を提起し、勝訴判決を得ることが必要です。

 そして、現実に居室を占有している者が誰なのか分からないときは、明渡裁判の被告となるべき者を特定するため、まず、裁判所に占有者不明のまま「占有移転禁止の仮処分」の申立をします。保証金を予納しますが(勝訴すれば取戻せます)、仮処分が認められると、裁判所から執行官が現地へ行き、実際に居室を占有している者に質問等して誰が占有しているのかを確認(確定)し(例えばB)、以後、B以外の者が居室を占有することを禁止する旨の張り紙をします。

 これにより、貸主は、A及びBを被告として明渡裁判を提起し、その勝訴判決に基づく強制執行により、居室の明渡しを実現することができます。たとえ、B以外の者(例えばC)が居室を占有していたとしても、先の占有移転禁止仮処分の効果により、Cも退去させることができます。


「元夫が破産、子の養育費もらえない?―破産しても請求できる」

質問

 私は、5年前に家庭裁判所の調停で夫と離婚しました。当時2歳の子の親権は私がとり、夫が養育費として毎月3万円を支払うこととなりました。
 ところが、昨年から養育費の支払いが滞りはじめ、とうとう裁判所から、元夫について破産手続を開始するとの通知が来ました。もう養育費の支払いを求めることはできないのでしょうか

回答

 あなたは、元夫に対して養育費という債権をもつ債権者のひとりです。元夫について破産手続が開始されると、債権者は、債権届という書類を提出して破産者の財産から配当を受けることになります。しかし、破産者に多額の財産があることは稀ですから、配当はなし、あるいは少額にとどまることが多いようです。

 残された債権については、ほとんどの場合、破産者に対し、支払いを免責するとの決定がされ、債権者は支払いを求めることができなくなります

 しかし、養育費など一定の債権については、特別に、免責の効力が及ばないとされています(破産法253条)。

 ですから、あなたも、破産手続開始の時点で滞っている養育費については、債権者のひとりとして、債権届をして配当があればこれを受けることができます。足りない分は、免責の決定の後でも支払いを求めることができます。

 また、破産手続開始後の分の養育費については、破産手続とは関係なく支払いを求めることができます。

 このように、養育費は法律上特別扱いをされる債権ですので、実際に請求する場合には専門家に相談することをお勧めします。

 (弁護士 長島佑享)