JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

「亡夫の債務発覚 相続放棄間に合う? ―請求書受領3カ月以内に申述を」

質問

 夫が2年前に亡くなりました。夫は生前、事業に失敗して全財産を処分して債務を整理したため、相続すべき財産は何もありませんでした。ところが、先日、A社から相続人の私に亡夫の債務500万円を支払えとの請求書が届きました。これからでも相続放棄はできますか。

回答

 相続人が相続の放棄をするためには、被相続人が死亡したことと、被相続人の死亡により自己が相続人となったことを知った時から3か月以内(「熟慮期間」といいます。)に家庭裁判所に申し出て相続放棄の申述をしなければなりません(民法915条1項、938条)。この期間内に相続放棄の申述をしないと、相続人は被相続人の財産のみならず債務も全て受け継ぐことになります。
ただし、判例上は、このことについて例外を認めており、「相続人が3か月以内に相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項 所定の期間は、相続人が相続財産(債務を含みます。)の全部もしくは一部の存在を知った時、又は通常これを知りうべき時から起算するのが相当である。」(最高裁昭和59年4月27日判決)と考えられています。
したがって、あなたの場合、相続が開始してから2年以上が経過していますが、あなたが亡夫の財産や債務は全く存在しないと信じ、かつ、そのように信じたことには相当な理由(亡き夫が生前に全財産を処分して債務を整理したため、財産および債務とも全くないものと信じた。)があると考えられますから、A社より請求書を受領した日(債務の存在を知った日)から3か月以内に家庭裁判所に申し出て相続放棄の申述をすれば、相続放棄が認められ、A社からの支払請求を拒否することができるでしょう。


「相続した農地に古い仮登記あり ―時効を理由に抹消登記可能」

質問

 私が父から相続した市街化調整区域内の農地には、40年前の売買を原因として農地法5条の許可を条件とする所有権移転仮登記がついています。買い主はすでに死亡しており、売買の話は全く進んでいません。この仮登記を抹消したいのですが、どうしたらよいですか。

回答

 市街化調整区域内の農地を農地以外のものに転用する目的で売買するときは、買い主は農地法5条の許可を得ない限り、当該農地を自己名義に所有権移転登記することができません。
このため、買い主は売り主に対して同法5条の許可申請協力請求権を有しています。この許可申請協力請求権は、権利を行使することができるときから10年間行使しないと時効により消滅し(民法167条1項)、買い主は農地所有権を取得することができません。この消滅時効の起算日は、特約で同請求権行使の時期が決められていればその日、決められていなければ売買契約の締結日とされます。
あなたの場合、売買契約を締結後、契約の履行が全く進んでいないとのことですから、買い主の売り主に対する許可申請協力請求権は時効により消滅し、当該仮登記の抹消は可能と思われます。ただ、抹消登記手続きをするためには、死亡した買い主の相続人調査をした上、その相続人全員を相手方として仮登記抹消登記請求訴訟を提起し、その勝訴判決に基づいて仮登記の抹消登記をすることが必要になるでしょう。
なお、買い主が売り主に売買代金の全額を支払済みであるとか、当該農地が買い主に引渡し済みである等の事情があるときは、売り主またはその相続人が消滅時効を援用するのは権利の濫用として認められないことがありますので注意が必要です。

(弁護士 長島佑享)