JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 15年前のある朝、二男は父と激しい口論をした末に家を飛び出し、間もなく消息を絶ってしまいました。その後父は心労で病に倒れ昨年の正月に亡くなりました。相続人になる配偶者と長男は、家庭裁判所に二男の財産管理人を選任してもらい父の遺産分割を経て期限内に相続税の申告納税を済ませました。母親は生死がわからない二男の失踪宣言を家庭裁判所に申し立てたところ、今年の五月に家庭裁判所から失踪宣言が言い渡され二男の死亡が確定しました。二男には働いて貯めた貯金があり、掛金の自動振替によって自ら農協の生命共済に加入していました。この失踪宣言によって、(1)二男はいつ死亡したことになるのでしょうか。(2)二男が相続した父の財産と納税した相続税はどうなるのでしょうか。(3)二男の財産は誰がいつ相続するのでしょうか。

回答

失踪宣言を受けると

 不在者の生死不明の状態が7年間続いた場合には、両親などの利害関係者は家庭裁判所に失踪宣言を申し立てることができます。裁判所で失踪宣言の審判が確定すると不在者は7年間の失踪期間満了の日に死亡したものとみなされ相続が開始することになります。

二男の相続開始日と相続の開始を知った日

 ご質問の場合、二男の生死が不明になってから七年間経った日(以下「相続開始日」とします。)に死亡したことになり、失踪宣言の審判が確定したことを知った日(以下「相続開始を知った日とします。)が、相続人が相続の開始を知った日になります。

父の相続について修正申告が必要

 二男は生死が不明のまま父の遺産を相続していますが、父の相続時にはすでに死亡していたことから相続人となりえず、この遺産分割協議は無効になります。そこで、長男と配偶者は、二男の死亡に伴い父親に支払われた死亡共済金と二男が相続した父の財産を持ち戻して遺産分割協議をやり直す必要があります。代襲相続人(二男の子)がいないことから法定相続人を2人とした修正申告書を速やかに提出して納税しなければなりません。なお、この修正申告に対しては、過少申告加算税や延滞税はかかりません。

二男の相続人は更正の請求をする

 二男の相続開始の日には父親は生存していましたので、法定相続人は父母の二人ということになります。財産管理人は、二男が父の相続財産を取得したものとして相続税を申告納税していますが、二男は父より先に死亡し相続人にはなれなかったのですから、二男の相続人である母親らは二男が父から取得した相続財産を返還するとともに、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に、すでに二男が納税した相続税の還付を受けるために更正の請求をすることができます。

二男の財産に対する相続税の申告

 二男の遺産は、財産管理人が管理していた預貯金と更正の請求によって税務署から還付される相続税相当額、みなし相続財産としての死亡共済金ということになります。これらの財産は、相続開始の日に母親らが相続又は遺贈によって取得したものとみなされ、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税を申告納税することになります。

死亡保険金の受取人と課税関係

 相続税の計算上みなし相続財産とされる死亡共済金は、受取人が父親になっていることですから、父の相続人である母親と長男が協議して受取額を決めることになります。二男の相続財産の計算においては、法定相続人が父親と母親の2人になりますから死亡共済金のうち一千万円までの金額は非課税となります。父親の相続税の計算においては、この死亡共済金は単なる未収金として相続税の課税対象となることに留意してください。