JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 昨年十月に父が九十六歳で亡くなりました。生前に何の対策もせず相続を迎えたことから相続税の申告期限までに遺産を分割することができず、つい先ごろ調停で話し合いがつきました。そこで、反省を込めて私の相続までにはしっかり対策を打っておきたいと考えています。相続人は妻と三人の子ども達ですが、いつまでに何をやっておくべきでしょうか。

回答

家を守るという大義

 家督相続から均分相続になって66年経つだけに、長子と他の相続人との争いが後を絶ちません。農地法が家単位で農地を管理しているように、農村では隣近所との信頼関係を大切にしながら「家」の田畑を耕し村社会の秩序を守ってきた歴史があります。家族も「家」に帰属し育まれて独立することを営々と続けてきたのです。親の相続が始まると、家を守るという長子の大義と個人の権利を主張する他の相続人との利害が相反するから相続は簡単にはまとまらなくなってきた。家を守るとしてほとんどの財産を長子が相続できる必然性が乏しいのです。親は、長子が跡をとることを当然と思い込み、長子は弟姉妹に暗黙の了解が得られているものと思い込んできたところに原因がありそうです。

相続対策は10年で

 親の年齢からするとご本人はおよそ70歳、お子さんは40歳になると思われます。およそ25年後には次の相続がやってくるかもしれません。とすれば、確かな相続対策の期間は心身ともに健全に過ごせる十年間、この時期をどう過ごすかが我が家の将来を左右するとすれば、「毎日が相続」の思いで「配偶者の老後のこと」、「子ども達の自立」に取り組み、家の祭祀と経営移譲を見届けることが当面の目標になりそうです。そのためには子どもの相続教育を怠らないこと、相続人との生前協議を重ねること、できることから生前に実行していくことが大切です。そうすれば節税対策に腐心しなくても相続税は軽減されるものです。

まず遺言書の作成から

 対策を始める前に、親として・夫として・相続される者として子や妻に託すこと、相続人の権利と義務については正しく伝え、各相続人にとって最もふさわしい財産を割り当てます。まず自筆(手書き)で遺言し、生前対策が進むにつれ遺言内容に訂正が必要になってきたら、惜しまず書き直して最後に公正証書にします。加齢とともに遺言能力がなくなったり、ある日突然の相続に備えるものです。申告期限内に遺産の分割協議が整わなくても遺言書があれば小規模宅地の評価減、配偶者の税額軽減、相続税の物納や延納、納税猶予などの相続税の特例を受けることができますから遺言の効用は大きいと思います。

跡取りの相続財産

 相続とは被相続人の生活と仕事を相い続けてもらうことですから、相続人の合意により跡取りを決めて家産や祭祀財産を生前に引き継ぐことにしましょう。相続は均分に祭祀の主宰や親の扶養は跡取りにという不公平にならないよう配慮なければなりません。できれば、農地の贈与税の納税猶予制度をつかって農地の生前一括贈与をしたり、農業生産や不動産の賃貸事業を法人化するなど将来を貫く家業の経営体制をつくっていきます。

遺産争いを回避するために

 総財産の割に小さいのが預貯金ですが、相続税の納税資金などとして必要以上に貯めた金融資産が争いの種になっています。不動産をもらっても管理できず相続税を払えないから金融資産に目が向くのです。それならば、生前に子ども達の自立のためにもっと遣うべきで、生前に出すか相続後に分けるかの違いで、相続時精算課税制度や生前に非課税制度をつかって実行すると相続税も大きく軽減できるというものです。不動産についても余計に持たないことが肝心で、相続分を引き上げるものの引取り手がなく、実家に残されてしまうからです。

(つづく)