JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 昨年十月に父が九十六歳で亡くなりました。生前に何の対策もせず相続を迎えたことから相続税の申告期限までに遺産を分割することができず、つい先ごろ調停で話し合いがつきました。そこで、反省を込めて私の相続までにはしっかり対策を打っておきたいと考えています。私の相続人は妻と三人の子ども達ですが、いつまでに何をやっておくべきでしょうか。

回答

必要な養子縁組みは早めに

 再婚した配偶者が取得した親の財産は相続権のない先妻の子にはいかず、実家の重要な部分が欠けてしまうことがあります。異父母兄弟が遺産の持分をめぐって争ったり、相続人がいないために遺産が国のものになってしまう例が跡をたちません。少子高齢社会では家を守るための養子縁組が必須条件になってきました。孫を養子にする前に、家業に勤しみ家庭を守っていく跡取りの嫁を養子にしたり、子がいない場合は弟妹との養子縁組が必要になります。

 相続税を計算するうえで養子の数は実子がいる場合は一人まで、実子がいない場合は二人までとされていますが、配偶者の連れ子を養子にすると実子とみなされ節税にもなります。

財産づくりの総仕上げ

 土地は持っていれば儲かるものだとする土地神話が崩れて久しいが、固定資産税を上回る地価の高騰があった頃土地は財産でした。今日の土地には収益性と換金性そして安定性が求められています。つまり、「土地を取得するとき」、「土地を持っているとき」、「売ったとき」の税負担が大きいので、 利用できない土地や売れない土地がお荷物になってきたのです。次の相続が25年後にやってくるとすれば、何も稼がない土地にも固定資産税と都市計画税さらには相続税がかかり、その土地は半減する計算です。蓄えで生きる時代の生活費は安い方がよく、居宅の敷地の固定資産税は六分の一、相続税は五分の一で済む六十坪から百坪位が理想といえます。事業用の土地は固定資産税と都市計画税ができるだけ安くなるように、しかも賃料は相続税評価額の5%以上稼ぐ収益物件でなければ家産にならないのです。土地の譲渡や物納の際には測量し地積を確定する必要がありますが、隣地の地主の承諾を得られないことが多く関係者は苦労しています。事情を知り尽くした当事者が生前に話し合って解決し、換金性の高い土地にしておかなければなりません。境界や地積があいまいな土地は買い手がつかず、物納もできない土地になってしまうからです。

生前贈与は相続税の節税になるように

 相続税を少しでも軽くしようと子や孫に生前贈与をされていますが、そのほとんどが名義借りであったり、贈与の実態のない預貯金が多くその効果は小さいものです。大切な財産ですから貰った人に感謝されるくれ方をしたいものです。子や孫の自立を見届けるための「教育資金の一括贈与(一人1,500万円まで)」や「住宅取得資金の贈与(一人1,200万円まで)」、配偶者の老後の生活保障としての「居住用財産の贈与(2,000万円まで)」、特別障害者の生涯設計としての「一定の信託受益権の贈与(一人6,000万円まで)」はいずれも非課税ですから相続開始前3年以内の贈与加算の必要もありません。つまり自助努力をしながら生前に相続財産を無税で贈与、相続本番で分けるよりはるかに効果的であるといえます。

相続税の納税対策を講ずる

 今ある財産を評価して、おおよその相続税の総額を試算することができます。誰に何を相続させるかを想定しながら各相続人が納めるべき相続税額を試算します。各相続人が納めるべき相続税額を金銭で納めるか、 延納するか、物納か、譲渡して納めるかを計画します。いつ発生するかわからない相続のために多額の金銭を準備しておくのは不経済でもめごとの原因になりますから、相続が始まったときに必要な資金が必要な人に支払われる生命共済へ納税額を目安に加入します。高齢者が加入すると掛金は高いものの共済金を確実に受取ることができます。将来物納にあてるものとして優良な土地を未利用地にしないこと。建築制限を受けている土地は時間をかけて交換・買替・買い増しなどによって換金性を高めておきましょう。

相続教育と生前協議

 人が亡くなると、持ち主を確定するために財産や債務は相続人に均分で引き継がれ、相続人の共有状態になります。これをとらえて「私の権利」というわけです。本来、相続とは被相続人が貫いた仕事や生活を相い続けることで、家業や祭祀を承継し遺族を扶養する人が財産を相続することだといわれています。家族の多様化、 親族関係の希薄化と相まって均分相続が定着してきました。親の相続が家の存亡をかけて争うことになれば家業はもとより生活の基盤も根底から覆されてしまいます。「まさか」の前に、正しい生活観とともに我が家の相続観を六十年の親子の歴史の集大成として受け継ぎたいものです。改めて対策をしなくても相続税の節税につながります。