JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 父の相続のときに殆どの財産を相続した弟が突然病気で亡くなりました。弟は配偶者も子もいないので母親が相続人です。弟は事業上の数百万円の借入金がありましたが相続後に母が全額返済しました。また、弟は一緒に住んでいた居宅とその敷地を母に相続させるとした遺言書を作成していました。しかし、母は「子の相続はしたくない」と言っており、いっそのこと母が相続を放棄すれば私達3人の姉妹が相続することになるので基礎控除も増え節税になるのではないかと考えています。何よりも子の財産が親の代へ戻ると相続税を二度負担することになるので母が相続を放棄することに賛成です。弟の財産を母親が相続した場合と相続を放棄した場合とで税負担はどちらが得なのでしょうか。

回答

 弟さんには配偶者や子がいないことから母親が単独で法定相続人になります。母親がこの相続を望まないのであれば、相続が始まったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ相続の放棄を申述して相続人にならないことができます。母親が相続を放棄すると母親は最初から相続人にならなかったものとされ、その順位は兄弟姉妹に移りますから法定相続人は3人の姉妹ということになります。

 ただし、母親の相続放棄によって法定相続人が兄弟姉妹になったとしても、相続税の基礎控除の額は3,600万円(3000万円の定額控除+法定相続人一人当たり600万円)で変わらず、相続税の総額の計算にも影響を受けません。つまり、相続税の総額を計算するうえで相続人の数は相続の放棄があってもその放棄がなかったものとして計算することになっているからです。相続を放棄しても母親は死亡共済金や死亡退職金を受取ることができますが、死亡共済金と死亡退職金それぞれについて法定相続人一人当たり500万円の非課税の特例は受けらません。母親の相続放棄によって相続人になった姉妹が受け取る死亡共済金や死亡退職金については、それぞれ500万円(法定相続人は一人)までの非課税の適用があります。母親は相続を放棄した場合でも遺言によって居宅の敷地を相続することができます。この居宅や敷地については小規模宅地(330m2まで20%)としての評価減の特例を適用することができますから取得して引き続き居住されることをおすすめいたします。なお、相続を放棄した母親が取得する居住用財産や受取った死亡共済金・死亡退職金からは債務を控除することはできませんが、実際に支払った葬式費用については控除することができます。相続放棄の期限である3カ月間(熟慮期間)は、財産と債務の存在と規模などを確認したり、財産を引き継ぐべきか否か、誰が家を守り祭祀を主宰するのか、誰が親を扶養するのか、相続放棄によって各相続人の承継すべき財産と相続税はどう変わるのか、などをじっくり見極める必要があります。母親が相続を放棄したことにより相続人となった姉妹が納付すべき相続税額は、兄弟姉妹につき算出した税額に20%を加算した金額になります。

 母親が相続放棄した場合の相続税の総額は、各相続人が取得した財産から負担する債務や葬式費用を控除した正味財産から相続税の基礎控除(この場合の法定相続人は一人ですから3,600万円)を控除した課税価格(この場合の法定相続人は一人ですから課税価格そのもの)に税率を乗じて算出します。相続税の総額に正味財産のうちに各相続人が取得した財産の占める割合を乗じて各相続人の納付すべき相続税額とします。母親も遺贈によって財産を取得していますから応分の相続税を納めなければなりませんが、相続を放棄しても配偶者の税額軽減(法定相続分としての全財産または一億六千万円まで無税になるしくみ)の適用により納付税額はないことになります。たしかに、子の財産が親の代へ戻り相続税を二度負担することになるので、数次の相続を通してみると二割加算になっても姉妹が相続した方が有利になりそうです。親がそのまま相続した場合と放棄によって子(兄弟姉妹)が相続する場合の我が家の財産の承継と相続税については、有利不利を総合的に判断し、やむを得ない場合に限って放棄をするようにしたいものです。