JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 私は、今年88歳になったので相続対策として、子の自立と配偶者の老後のために生前贈与をしました。長男には農業経営を移譲をするために農地の生前一括贈与を、二男には住宅取得資金として二男の貯金口座に1500万円振り込みました。長女には2500万円まで無税で贈与できる相続時精算課税制度をつかって賃貸アパートを一棟贈与しました。配偶者には居宅敷地のうち2000万円に相当する持ち分を贈与しました。三人の孫たちには一人300万円の定期貯金を組みました。贈与税の申告までに確認しておくべきことがありますか。

回答

贈与税は貰った人が申告納税する

 今年1月1日から12月31日までの一年間に財産をもらった人は、来年2月1日から3月15日までに自ら贈与税を申告し納税しなければなりません。受贈者が納付せず、贈与者が連帯して納税した場合、税額の返済を受贈者に求めなければ受贈者は納付すべき税額も贈与を受けたことになりますから留意してください。申告書には贈与者の住所と氏名、財産の明細、財産の価額、非課税金額などを記載するので、今から必要な資料を確認しておきましょう。

長男への農地の生前一括贈与

 経営移譲にともなって、全ての農地を後継者に一括贈与すると、贈与者が死亡するか受贈者が死亡するまで贈与税の納税が猶予されます。父の相続の際には、長男が特例を受けた農地を相続財産に持ち戻して相続税を計算しますが、長男はさらに相続税の納税猶予を受けることができます。一人の後継者に一括贈与する制度ですから、すでに他の子らに農地として一部でも贈与している場合にはこの特例を受けられないので留意してください。また、経営移譲によって経営権と生産手段が親から子へ移転することから、農地だけでなく農機具などの動産にも贈与税が課税されることになります。そこで、農業用の動産については、贈与者の相続の際に相続財産として計上する旨の届出書を税務署長に提出しておく必要があります。

二男への住宅取得資金の贈与

 父母や祖父母から子や孫への住宅取得資金の贈与については一定の要件のもとに贈与税が非課税になる制度があります。受贈者は平成27年1月1日現在で20歳以上であること、受贈者の平成27年分の合計所得金額が2000万円以下であること、贈与された資金の全額を平成28年3月15日までに住宅の新築又は増改築、新築・中古物件の購入にあて、遅滞なく(請負契約の場合に限り平成28年12月31日まで)居住することなどの要件を満たさないと贈与税を納めることになりますから留意してください。

 平成27年分は1500万円(相続時精算課税制度の特別控除枠2500万円を併用すると4000万円)まで無税で贈与することができます。父母らがこの特例枠を超えて資金を支出している場合は、子らに対する贈与または貸付金になりますから留意してください。

相続時精算課税制度によって貸家を贈与する場合

 生前に賃貸物件を長女へ贈与することで家賃収入が子へ移り、相続財産を減らすとともに相続財産をふやさない効果があります。ところで、長女がこの貸家とともに父の借入金の返済を引き受けた場合は負担付贈与とされ、父は長女に引き継いでもらった借入金で貸家を長女に売ったことになるので、父に譲渡税がかかり長女はもらった貸家の時価額(減価償却後の帳簿価額)から負担した借入金を控除した残額に贈与税がかかることになります。相続対策として「借入金で貸家を建築した場合の節税効果」と長女に生前贈与をした結果の「相続税・所得税等の税負担額」を比較して判断することになります。この贈与については、借入金を父親が返済する方が得策かもしれません。なお、申告期限内に精算課税贈与として申告しなかったときは暦年贈与(110万円控除)として申告納税することになりますから留意してください。この贈与を取りやめる場合は平成28年3月15日までに錯誤などとして所有権を父に戻す必要がありますから留意してください。

配偶者への居住用財産の贈与

 20年以上連れ添った配偶者への居住用財産または取得資金として2000万円まで非課税で贈与できます。農家の場合は敷地が広く居宅だけでなく農業用の倉庫や納屋などの敷地に使われている場合が多く、敷地全体の持分で贈与すると非課税の適用のない事業用の敷地まで贈与してしまうことになりますから留意してください。敷地全体の持分で登記した場合はこれを抹消し、贈与する居住用の部分を特定するために敷地を分筆する必要がありますから念のため確認しておきましょう。

お孫さんへの現金贈与

 未成年、成年を問わず贈与は「あげます」「いただきます」という契約で成立するものですから、「もらった人が」「もらった気がする」ような贈与でなければ、贈与税の申告書を提出したとしても贈与ではありません。貯金通帳や証書にするも贈与者が管理していたことから、名義預金などとして税務署長から指摘される例が増えています。大切なお金を贈与する意味や目的が曖昧になっているところに問題がありそうです。なお、お孫さんの共済契約の掛金を祖父が支払っている場合は、この贈与が相続開始前3年以内の贈与とされ相続財産に持ち戻されることがありますから留意してください。