JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 預貯金の通帳をもとにした収支計算だけに、平成27年分の農業青色の記帳と決算を見直しています。農業所得の計算と所得税や消費税の申告にあたって何か留意すべきことがありますか。

回答

効率化と合理化が農業経営の課題

 TPPを目前に控え、農業経営の効率化や合理化が求められています。今年こそ農業経営の現実と課題をとらえて、生活や仕事の実態を反映した所得計算と申告書を作成したいものです。とくに農業所得の収入金額と必要経費はどのように判断し計上すべきか、消費税の課税売上になるものと課税売上にならないものの再確認をしておきたいと思います。

農業所得は収穫基準が原則

 農業所得は農産物の栽培等による所得です。農業所得の金額は、その年の総収入金額から必要経費を控除して計算します。農産物のうち米麦や大豆などの主穀作物は、農産物を収穫した時に、収穫した時の価額を総収入金額に計上する収穫基準が基本になっています。具体的には、平成27年中の販売高と家事消費額に年末たな卸高を加え、年初のたな卸高を差引いたものが収穫基準による所得金額になります。年末たな卸高は年末のたな卸数量に単価を乗じて計算しますが、平成27年の生産量に平成26年から繰越された在庫数を加え、27年中の家事消費と販売数量を控除して在庫数量を計算します。単価は27年産(26年産の年初在庫から出荷したものとすると27年末の在庫は27年産ということになります)の出荷米に支払われた農協からの仮渡金の単価を参考にします。

農協への飼料米の収入金額は

 なお、農協に出荷した平成27年産の飼料米については、年内に農協からの手当金や国からの交付金等の額が決定していないことから、農協への委託在庫として手当金(㎏あたり10円換算とか)を参考にしてたな卸高を計上します。このたな卸高は平成28年の年初たな卸高として必要経費になり、飼料米生産に対して国から支払われる「水田活用直接支払交付金」は28年分の雑収入になります。

出荷基準で販売高を計上するもの

 一方、野菜や果実、花卉、畜産物、生乳、鶏卵などは、収穫(生産)して在庫することなく出荷することから、出荷した時に販売した金額を売上高に計上する出荷基準によることができます。庭先、直売所、市場、スーパー、会社等農産物の販路は多様化していますが所得税では農産物の販売高は手取りではなく運賃手数料等を差引く前の総額で計上することになります。

作業受託等の収入計上

 他人の農作業を受託したり農地を借り受けて収穫する場合に、売上げの計上漏れを指摘される事例が多くなっています。作業を委託する農家や農地を貸し出す側が農業所得を申告しない場合であっても、受託料や収穫米などの収益は農業所得の総収入金額に計上しなければなりません。

青年就農給付金を受け取ったとき

 国からの青年就農給付金のうち、経営開始型で独立経営をされた方が受給するものは農業所得の雑収入になりますが、準備型の給付金は受給者の雑所得になります。それぞれの所得税の確定申告が必要になることがありますから留意してください。
農業所得の申告にあたっては、親とは別に所得を計算しますが、夫婦で受給した場合は、いずれか一方がまとめて申告することになります。
農業所得の必要経費は生産原価、販売費、その他の費用で農業所得を得るために直接要した費用です。なお、年末に未払費用として計上するためには、年末までに支払債務が確定していること、年末までに原因となる事実が発生していること、年末までに当該金額を合理的に計算できることをもとに判断することにします。

消費税における取扱い

 消費税では直売所や市場などへの委託販売については、運賃手数料や検査保管料等を差引かれた出荷者の手取額をもって課税売上高とすることができます。消費税の課税事業者になるかどうかの判定や消費税額に大きな影響がありますから留意してください。
自家消費については、家事消費、事業消費、知人や親戚への贈答に分けられます。家族の自家消費は課税売上になりますが、事業消費や知人等への贈答については消費税は不課税となりますからそれぞれ区分しておきましょう。
雑収入のうち稲わらなどの副産物は課税売上になりますが、交付金等、国庫補助金等、青年就農給付金等は不課税になります。
組合が支払う利用高配当は課税仕入れになりますが、受け取る組合員は課税売上になりますので留意してください。自家消費や雑収入はそれぞれ一括表示するも、その内容にそって区分して申告することで消費税の負担を軽減することができます。