JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 息子が昨年結婚し孫の誕生が予定されているので、今年は子どもたちの住まいづくりを支援したいと考えています。子には資力がなく相当部分を親が負担することになりそうです。親が子の住宅を建ててあげたり資金を援助すると贈与税がかかると聞きましたが、どんな場合にどのような税がかかるのでしょうか。将来の相続も考慮して税負担が最も小さくなるような住宅取得の得策がありますか。

回答

住宅に優しい税制へ

 住宅やその敷地は生活に必要な財産であるとして、その取得・保有・譲渡の各段階において相続税、贈与税、所得税、固定資産税などを軽減するしくみがとられています。父母や祖父母からの住宅取得資金の贈与、配偶者へ居住用財産の贈与、被相続人が居住していた小規模宅地の評価、居住用財産の譲渡・買換え・交換、相続後の空家の譲渡、住宅借入金等控除、固定資産税における住宅地や新築住宅への課税調整などの優遇税制によって新築住宅の促進と住環境の改善を進めようとするものです。

家団内での資金のやり取りは節税にならない

 子が住まいを取得することは家族の生活設計にとって大きなテーマです。子の家を作ることは親の甲斐性だとして資金のやり繰りなどの便宜が働くものです。子の住宅取得資金の大部分を親が負担しながら建物の所有権を子の名義で登記したり、住宅ローンの返済を親が肩代わりするのも親子だからこそなのです。これらのやり取りは将来の相続税の負担を不当に減らすものとして、親が支払った建築代金や毎年の元利返済額が子に対する贈与とみなされて贈与税が課され、親から住宅の取得資金を借用するも出世払いなどとして返済しなかったときは、親の相続で「子に対する貸付金」として相続税が課税されますから留意して下さい。もっとも、「子に対する貸付金」を子が相続すれば、親に対する借金の返済は免れますが、相続税を負担しなければならず節税したことにはなりません。

持家か借家か子の住宅取得を考える

 少子高齢社会では、必要以上の収入は見込めず、まとまったお金が入ってこない時代だけに子の独立には親の支援が不可欠です。子の仕事や子育てなどの生活設計を考えると住宅は持家か借家か、どちらが経済的で機能的なのかを見極めなければなりません。持家であれば、耐震・省エネ・バリアフリーなど、老後の二人暮らしまでを想定した無駄のない節税設計が必要です。建築資金の総額を見積り、自己資金に不足する部分は非課税枠の範囲内で「住宅取得資金の贈与の特例」を活用し、残余は子の返済能力にあわせた借入とします。返済の当てのない親子間の金銭の貸借が見込まれる場合は、親が持ち分を負担して親子の共有登記をしておきます。相続税の節税と相続の争いを避けるためです。

贈与税の非課税財産は生前に贈与する

 贈与税は相続税より割高になることから、生前に父母や祖父母から子や孫の代へ財産の移転が進まないのです。生前贈与をしなければ親の財産はそのまま手許に残り、いずれ相続税の累進税率によって税負担が大きくなるのです。子の住宅取得を機に「尊属からの住宅取得資金の贈与の特例」によって親の財産(現金預金)を非課税で子に移転することができれば、子の独立と将来の相続財産を減らす効果が得られます。

3000万円まで無税で贈与できる特例

住宅資金の贈与の特例

 子や孫が、直系尊属(父母や祖父母)から住宅用の家屋(家屋とともに取得する土地等を含みます)の新築・取得・増改築等にあてるために贈与を受けた資金のうち非課税限度額までの全額を、翌年3月15日までに住宅の取得に充てて引渡しを受け、居住の用に供したときは、その限度額までは贈与税を課さないとするものです。なお、翌年3月15日までに完成しなくても遅滞なく(翌年12月31日まで)居住することが確実と見込まれるときは適用が認められます。

【限度額】
 この場合の非課税限度額は、住宅の新築等の契約をした時期によって定められています、省エネ・耐震・バリアフリー等の良質な住宅の非課税限度額は、平成31年3月31日までの契約については1200万円まで、平成31年4月1日から平成32年3月31日までの契約については3000万円までとされています。

【年齢制限】
 子や孫は贈与を受けた年の1月1日において20才以上で、かつ合計所得金額が2000万円以下であること。父母や祖父母は贈与した年の1月1日において60歳以上であることなどの条件がありますので留意して下さい。

【3以内の贈与加算】
 なお、相続開始前3年以内の贈与であっても、この特例は非課税の贈与ですから相続財産に加算する必要はありません。

【相続時精算課税制度による贈与】
 子の所得制限がなく親の年齢が60歳未満でも2500万円まで住宅取得資金を贈与できる制度で、直系尊属からの住宅取得資金の贈与の特例と併用することも可能です。この場合は最高で5500万円まで贈与税はかかりません。ただし贈与者の相続の際は、このうち2500万円は相続財産に加算しなければなりません。したがって、相続時精算課税制度による贈与は贈与税も相続税も無税になるということではありません。住宅の規模にもよりますが、直系尊属からの住宅取得資金の贈与の特例のみで住まいづくりができそうです。