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金融機関コード 4859

法律相談

相続した土地に100年以上前の抵当 ──供託により登記抹消可能

質問

 相続した土地を調べていたら、100年以上前の抵当がついていました。登記簿を見ると、借りたのは明治20年代で、借り入れ元本は100円、利息年1割2分で、抵当の名義人の住・氏名も記載されています。しかし、抵当の名義人の行方が全くかりません。

 このような抵当を消するには、どうすればよいでしょうか。

回答

 抵当の登記を抹消するには、登記権利者(所有者)と登記義務者(抵当の登記名義人)が、共同して登記所(法務局)に抹消登記の申請をすことになります(共同申請の原則不動産登記法60条)。

 しかし、そうすると、抵当の登記名義人の行方が不明の場合には、所有者はいつになっても抵当を抹消することができない、という不利益を受けることになります。抵当がついたままだと、土地を売却したり、新たな借り入れ担保として差し入れる場合に、著しい支障をきたすことになるからです。

 そこで、不動産登記法は、特例を設けて、抵当の登記名義人が行方不明であり、かつ、借入金の弁済期(弁済期の記載がなければ貸付日)から20年以上が経過している場合には、登記権利者(所有者)は、借り入れ元本と利息・損害金(損害金の記載がなければ利息相当額)の全額を供託すれば、単独で抵当の抹消登記を申請することができることにしました(同法70条3項後段)。

 従って、あなたは、抵当の登記名義人が行方不明であることを証明する書面(一般的には、抵当の登記名義人に発信した弁済通知書と、郵便会社の「あて所に尋ね当たりません」という付箋=ふせん=を添付します)と、借り入れ元本100円と借入日から供託する日まで年1割2分の割合で計算した利息・損害金の合計額(ちなみに元本100円と、年1割2分の125年分の利息・損害金の合計額は1600円)を法務局に供託し、その供託書を申請書に添付すれば、単独で抵当の抹消登記を申請することができます。

 この特例は、抵当の登記名義人が個人(自然人)の場合にかぎらず、会社その他の法人である場合にも適用されます。

 ただ、この特例が適用される法人とは、「当該法人について商業登記簿に記載がなく、かつ、閉鎖登記簿が廃棄済みであるため、その存在を確認することができない場合等をいう。」とされています(昭和63年7月1日民三3456)。

 ですから、抵当の登記名義人が会社その他の法人である場合、その法人が商業登記簿に記載がなく、かつ、閉鎖登記簿も廃棄済みであるため、その存在を確認することができない場合には、あなたはこの特例に基づいて、単独で抵当の抹消登記の申請をすることができます。

 しかし、その法人が商業登記簿に記載がなくても、閉鎖登記簿等が廃棄されずに登記所(法務局)に保存されている場合には、その法人の「行方不明」には該らないため、この特例の適用を受けることはできません。ですから、その場合には、あなたは裁判所に対し当該法人の清算人の選任の申立てを行い、選任された清算人(登記義務者)と共同して抵当の抹消登記を申請することになります(平成11年6月15日民三1200)。 


(弁護士 長島佑享)