JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

法律相談

もし、亡き弟の嫡出でない子が現れたら?—子だけが相続人になることも

質問

 弟Aが2か月前に死亡しました。弟に妻子はいません。私達の両親は亡くなっており、兄と私の2人がAの相続人です。20年ほど前、Aは「付き合っていた外国籍の女性BがAの子Cを産んだ」と言っていました。私たちはBとCの氏名も連絡先も分かりません。Aの戸籍には、妻や子の記載はありません。兄と私で弟の相続手続をして大丈夫でしょうか。

回答

 相続では、亡くなった本人(被相続人)の国籍のある国の法律(本国法)が適用されますので、Aの相続には日本民法が適用されます。

 配偶者は相続人です(民法890条)が、戸籍に記載されない内縁関係では相続できませんから、BはAの相続人になりません。

 母と婚姻関係にない父から認知された子(嫡出でない子)は、そのほかの子と同様に相続人です(900条4号、799条)。

 A・C間の父子関係についても、Cの出生当時のAの本国法が適用されます。本件では、CのAに対する認知の訴え(検察官が亡Aの代わりに被告になります。787条本文)が認められると、CはAの子としてAの唯一の相続人となります。但し、Aの死亡日から3年を経過すると提訴できません(同条但書)。従って、Aの死亡後3年を経過した後であれば、兄及びあなたで遺産分割協議してもCの出現の危惧は無いでしょう。

 Aの死亡後3年の経過より前に、兄及びあなたで遺産分割協議をすると、その後に、仮にCが子として現れたときは、Cは、兄又はあなたに対し、相続回復請求権(民法884条)を行使して、遺産として得られたはずの額の賠償を請求する可能性があります。相続回復請求権は、Cが相続権の侵害を知った日から5年又はAの死亡日から20年で消滅します(同条)。

内縁の妻に子が虐待された—親権者指定の審判(調停)申し立てを

質問

 私は10年前から内縁の妻Aと同居しています。私たちの間には8才になる息子Bがおり、認知もしました。先日、Aが、Bに対して体にアザができるほどの暴力を振るいました。私がBを連れて実家に帰ったところ、Aは、「親権者は自分だからBを引き渡せ」と要求してきました。Bを引き渡さなければなりませんか。

回答

 婚姻関係にある夫婦間の子は父母が共同親権者となりますが、内縁など婚姻関係にない父母から生まれた子は母の戸籍に入り、母が単独の親権者になります。父が子を認知した場合でも、親権者を父とする協議又は裁判所の審判がない限り、父は親権者にはなりません。

 したがって、親権者であるAからBの引渡しを要求された場合、親権者ではないあなたは、原則としてBを引き渡さなければならず、最悪の場合には未成年者の連れ去り事件として警察に通報されることもありますので注意しましょう。

 もっとも、AがBを虐待しているのであれば、親権者としては不適格です。あなたがBの親権者となるために、家庭裁判所に、「親権者指定の審判(調停)」を申し立て、Aに代わってあなたを親権者に指定してもらう手続きをとると良いでしょう。しかし、審判(調停)は、結論が出るまでにかなり時間がかかりますし、その間、Aが親権者であることには変わりありません。

 それでは子の安全に不安が残りますから、この審判(調停)の申立と同時に、あなたは家庭裁判所に対してAの親権者の権利を停止させ(親権者の職務執行停止)、かつ、仮の親権者をあなたに指定する仮処分(職務代行者選任の仮処分)も申し立てるとよいでしょう。仮処分手続は迅速に審理されますので、比較的早期にAの親権者の権利を止め、一時的にあなたを親権の代行者とすることができます。

(弁護士 長島佑享)