JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 私は今年85才になりました。まだまだ農作業をこなしていますが相続のことが心配です。相続税の基礎控除が下がり、子や孫にも多額の贈与ができるようになった、との新聞の記事を見ました。これから相続税、贈与税はどのようになりますか。相続税がかからないようにと今から家族に贈与をしておきたいと考えています。生前贈与によって、相続税を軽減することができますか。



回答

相続税が改正されます

 バブルが崩壊して地価が大幅に下落したことなどから、相続税の基礎控除を引下げ、税率を引き上げるなどの改正案が国会で審議されています。配偶者と三人の子が相続人の場合、現行では9,000万円(5,000万円+1,000万円×4人)までは相続税はかからなかったのが、改正案によると5,400万円(3,000万円+600万円×4人)以上の財産があると課税されることになります。また、相続税の総額を計算する場合の最高税率は、50%から55%に引き上げられ、遺産が高額な場合は相続人の相続分より国(相続税)の取り分の方が大きくなる場合がでてきました。これによって相続税の納税者は1.5倍になるものと見込まれ、サラリーマンも相続税が課税される時代になってきたということです。

子や孫への贈与は軽減の方向へ

 そこで、「相続税がかかるから今のうちに財産をくれておこう」という動きが出てくるのは当然で、贈与した人と、しない人の差は歴然です。これからは贈与志向が高まるものと思われます。ところで、相続税がなければ高い贈与税を払ってまで生前に贈与する必要はないわけで、贈与税も成り立たないことになります。生前に財産の移転が行なわれてしまえば相続税が尻抜けになることから、生前贈与には高い税率の贈与税を課税したり、相続開始前3年以内の贈与財産を相続財産に加算するなど、被相続人が生涯に稼得した全ての財産を課税の対象にするとした考え方が貫かれ、生前贈与には厳格な取扱いがなされているのです。誰もが長生きできる時代だけに被相続人が95才であれば跡取りは70才、孫は40才ということになります。相続が始まる年齢が伸びたことにより親の財産が子や孫に移るのが遅れ、経済などへの影響が大きいことから、子や孫へ財産を贈与しやすいようにと特別の税率が設けられます。

実体のない贈与は相続財産に

 相続時精算課税制度による贈与についても、贈与者の年齢を60才以上とし対象者を20才以上の子や孫にまで広げました。生前贈与を奨励することになった贈与税ですが、贈与は実体を伴ったものでないと親などからの「借入金」や「預り金」などとみなされ、相続財産を減らすことにはならず、贈与の効果が得られません。贈与は「あげます」「頂きます」という合意によって成立する契約ですから、預貯金の名義を配偶者や子としながら、その所有者が満期の書換えなどの手続きを行なっている場合は、名義人がその事実を知っていたとしても「貰った」とする意識があいまいで、自らの意思で出し入れなどの管理をしていなければ贈与したことにはなりません。例えば、父親が二男の名義で毎月20万円づつの積立貯金をして1,000万円になったから、二男の居宅の新築資金に当てたとしても、積立てた貯金は名義貸し(父親のもの)ですから、建物の名義を父親にしないかぎり、二男に贈与税がかかることになります。祖父母から孫(幼児)に対する贈与であっても、親が代理してこれを受取り、親が保管することによって贈与は成立しますが、被後見人(後見されている人)からの贈与については、たとえ祖父母からの贈与であっても、その贈与はなかったものとされます。また、扶養すべき父親がいるのに祖父が孫(未成年者)の大学入学に際して入学金等を支払った場合でも、教育資金の贈与として贈与税は非課税とされます。

(次回へ続く)