JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 私は今年76歳になります。親子で野菜50aと米麦を5ha栽培しながら不動産(店舗と倉庫)の賃貸経営を行っています。来年から相続税が強化されると聞いて何か節税対策をやろうと思っています。家業を続けていく予定ですが、どんな対策がありますか。

 なお、相続財産はおよそ3億円、 相続人は配偶者と子ども3人です。日常の仕事を進めながらできる相続税対策はありますか。 どんな効果が期待できますか。

回答

来年から変わる相続税

 資産に対する課税の見直しによって、平成27年1月1日以降に開始する相続から相続税の基礎控除が引き下げられ、 最高税率と税率区分の引き上げが行われました。親子4人で3億円の遺産を相続した場合、 配偶者が半分相続しても改正後の相続税の納税額はおよそ二千五百四十万円で、改正前に比べると五百四十万円の増税になります。 

軽減策もいっぱいある

 そこで、国は、 祖父母から子や孫へ財産の移転を促進する税制を設けたほか、被相続人が住んでいた居宅の敷地や農業などの施設用地の課税の特例について、その適用範囲や面積を拡大するなど大幅な軽減策も講じました。したがって、改めて節税対策を講じなくても親子・夫婦・家族の営み、 そして日常の仕事のやり方を見直すことで増税分を取り返すことができるかもしれません。

専従者に給与を支払う

 家業としての農業経営では、 正しい家族労働の評価もしないまま相続人と被相続人の財布は共用になってしまうものです。青色申告者であれば、親の事業に専ら従事する配偶者や子に専従者給与を支給することができます。生計を一にする親族に対する正当な労働の対価ですから、 生前贈与と違って、相続財産への持ち戻し計算や遺留分として他の相続人から取り戻されることはありません。農業技術を伝承しながら所得を家族に分散し親の財産を増やさない効果が得られます。最低賃金以上の給与によって子らは納税資金を準備することができます。

経営移譲は農地の生前一括贈与で

 跡取りに経営を移譲するときは、 農地の生前一括贈与を行い贈与税の納税猶予の特例を受けます。相続による農地の分散を避けるために設けられた制度ですから、 すべての田畑を子の名義に替えても、 親か子の相続が始まるまで贈与税は猶予されます。贈与税を払っていないので、 この農地はいずれ親の相続財産に加算することになりますが、 遺産分割協議を経なくても引き続き農地の相続税の納税猶予の特例を受けることができます。つまり、生産緑地や一般の市街化区域の農地であっても農業を続けていくかぎり、 農地に対する相続税を免れ田畑を代々持ち続けることができるわけです。もちろん、農業経営が子に移譲されますから農業所得は後継者に移り親の財産を増やさない効果があります。

農地の相続も納税猶予で

 農家の相続では、 土地が遺産の大部分を占めることから納税のために農地の処分を余儀なくされています。納税負担を軽減するために設けられた「農地の相続税の納税猶予制度」は、 農地を時価で評価した相続税額と農業投資価額(10a当り畑は79万円、田は90万円)で計算した相続税額の差額が猶予されます。つまり、猶予税額は終身営農(家族労働や特定貸付・営農困難時貸付などの制度あり)によって免除され、 大きな税負担の軽減になります。なお、相続税の申告期限までに遺産分割協議が整わない場合、 生前において被相続人の農業の用に供していない農地、 相続時精算課税制度によって贈与された農地については、 この特例を受けることができません。農地の生前一括贈与による贈与税の納税猶予の特例を受けている場合は、 上記のとおり受贈者(子ら)の希望によってこの制度を利用することができ確かな相続対策になります。また、調整区域内の農地が将来、 市街化区域に編入されることが想定される場合は、相続時精算課税制度をつかった生前贈与(二千五百万円まで贈与税がかからない)によって経営移譲されることをお勧めいたします。

事業用の宅地をつくる

 広大な農家の居宅敷地には、居宅のほか納屋、物置、土蔵、車庫などが建っていますが、被相続人が住んでいた居宅の敷地については、 330m2まで80%の評価減になるほか、 農業用施設用地(倉庫、農機具の格納庫、 資材倉庫、農作業場など)として使用されている部分はさらに400m2まで80%減額することができます。 つまり、 最高730m2まで20%の評価になることから、 各建物にはそれぞれの機能を持たせ居住の用、農業用としてしっかり活用することが必要です。

貸家は商品価値を上げていく

 バブル時に建てた貸家は25年経ちますが、相変わらず機能し働いています。蓄えで生きる高齢化社会では生活費は安い方がよく、激しい競争に打ち勝つ流通も施設費は低い方がよい、したがって、住宅や店舗は人の物を借りた方が得策なのです。とくに住宅家賃は公共料金そのものですから、 限られた家賃収入の中で効率経営が求められています。安価で小奇麗な住宅、 収益を生む商業施設を次世代へ承継するためには計画的な営繕が必要です。貸家を親族が使用する場合は決められた賃料を受取り、空室を埋めていかなければなりません。つまり、空室によって賃貸割合が小さくなると貸家やその敷地の評価額が高くなって財産が増えてしまうのです。会社を作って貸家経営を個人から法人へ移すと土地建物の評価減のほか、 家族への所得の分散、 退職金や保険金の準備できることから相続対策はさらに進むことになります。