JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 父の財産は市街化調整区域内にある居宅の敷地と田畑、それに少しばかりの預貯金です。

 いままで相続税はかからないと思っていましたが、これからは我が家も相続税の申告が必要になりそうです。相続税を軽減するために何をどうしたらよいのでしょうか。高齢の親の相続をひかえ「家」をどのように守っていくべきか。相続税の負担はどのくらいになるのか、悩んでいます。よそでは遺産の分け方をめぐって調停や裁判をやっていると聞きますが、我が家には無縁だと思っています。

回答

 今年の1月1日以降の相続から相続税の基礎控除が引き下げられ、税率も見直されました。いままでは相続人が親子4人ですと9000万円までの遺産には相続税がかからなかったのに、改正後は5400万円(調整区域内の場合、宅地が2反、田畑が2町歩、預貯金2千万円くらい)をこえると相続税の申告が必要になります。大増税とはいうものの従来の基礎控除の範囲内の財産であれば申告を必要とするも納税しなくて済むかもしれません。つまり、被相続人の居宅の敷地については330m2まで(被相続人の事業用の宅地については400 m2まで、居宅と合わせて最高730 m2まで)は20%の評価(小規模宅地の評価減の特例)になるなど、この特例によって相続財産が基礎控除以下になる可能性があるからです。

相続税は円満な相続が前提

 相続税は納税の便宜、家業の承継、遺族の生活保障、配偶者の老後の生活などに配慮したしくみがたくさん盛り込まれています。例えば、相続税の物納、延納、小規模宅地の評価減、農地の相続税の納税猶予、配偶者の税額軽減など、いずれも遺贈(遺言によって財産をもらうこと)または申告期限内に分割取得することが前提になっています。つまり、節税対策より円満な相続対策を優先することが何より軽減策になるということです。子ども達への正しい相続教育や生前協議、できれば財産の移転をともなった経営移譲を行い、遺言書を作成するくらいの周到さがほしいところです。

相続って何か

 民法では被相続人の財産や債務は、亡くなった瞬間に相続人がこれを承継し、相続人が数人いるときは法定相続割合で共有するとしています。遺産が無主物にならないための便宜上の措置なのです。

 相続人の中に特別に寄与した人や生前に親から財産を受益した人がいることから、相続人間の話し合いで財産をどのように分けても、無償で譲渡しても、何も貰わなくても贈与税がかかることはありません。相続は被相続人がやってきた仕事や生活を「相い続ける」ことですから、相い続ける者が必要な財産を相続できるしくみを作っておくべきなのです。

相続がなぜ争いになるのか

 肩を寄せ合って平穏無事に暮らしてきた親族も、相続が始まると決して他人事でないことに気づくものです。相続人間に資産格差や所得格差があったのを見過ごしてきたこと。家業の大切さを教えてこなかったこと。家業を助け親の面倒を見てきた相続人の貢献を認めるすべがないこと。相続の権利と義務が明確でないこと。使い途のない多額の預貯金を残してしまったこと。家を守るという大義を他の相続人に理解させなかったこと。等々、長い間にもめる原因を作ってきてしまったのです。

親は相続について何をすべきか

 祭祀を主宰していくために必要な財源を確保してあげる。預貯金は子や孫の教育・住宅子育て資金として生前に贈与していく。配偶者の老後資金(年金共済へ配偶者が加入)、遺族の生活保障(終身共済へ本人加入)にあてるなど、後で分けるより税制にそって生前に上げる方が得策なのです。稼ぐ土地にするなど財産価値(換金性・収益性)を高めていく。必要な養子縁組をしておく。生前協議をして遺言書を作成するなど、余生も聡明に暮らしていただきたいと思います。