JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 平成28年分の確定申告をひかえて農業所得の金額、不動産所得の金額を計算すべく記帳内容をふり返っています。
 一年間の総決算をするうえでどんな点に留意すべきでしょうか。

回答

家業には利益が必須要件

 農業や不動産の貸付を業としている場合は、「家計を支え」、「家を守る」ために一定の所得が求められるところです。
 事業者はいつも貯金通帳に当座の経費や将来の機械の購入にあてるべき一定の残高を保有しているものです。これを生活のために費消してしまうと資金不足になり借入をしなければなりません。収入に見合った支出をするためにも正しい記帳が必要なのです。

主穀作物の所得の計算

 農業所得の金額は一暦年(1月1日から12月31日まで)の販売金額や作業受託料金などの総収入金額から生産原価や販売費などの必要経費、青色申告特別控除額を控除して計算します。
 米麦などの農産物は収穫したときに収穫した時の価額をもとに計算しますから、今年の販売高に年末のたな卸高を加え、前年から繰越された年初たな卸高を差引いて総収入金額を計算することになります。
 預貯金通帳をもとにして一年間の収入金額を計算すると、現金売りや未販売のたな卸高が反映されないので留意してください。
 なお、米麦の販売委託による概算金と精算金は受け取った日の収入金額とします。
 飼料用米は今年出荷しても入金は来年になるので委託在庫とし、 経営安定対策交付金などとともに29年分の収入とします。

生鮮野菜などの所得の計算

 野菜や果物、花卉、生乳、 畜産品などは出荷又は引渡した時、 市場などが受託品を販売した時に収入金額を計上します。
 農産物は庭先販売、市場、直売所、集荷業者、ホテル、給食センター、スーパーなど販路が多岐にわたっていますから、それぞれの販売高と手数料を両建てで集計します。
 小作料としての収穫物や受託料金、庭先や観光農園の現金売上、 集落営農組織などからの分配金の計上漏れが指摘されていますから留意してください。

農機具の売却は譲渡所得の収入

 農業用の機械等の譲渡による収入は譲渡所得になるので、農業所得の収入金額に計上しないよう留意してください。

小作料は農業所得か不動産所得か

 農業委員会等を介さずに農地を相対で貸し付けた場合の小作料は農業所得の収入金額に、農地に賃借権や利用権を設定した場合の小作料は不動産所得になりますから、利用権原をよく確かめておきましよう。

不作による損失

 多雨などによる作物の被害は生産原価を通じてその損失を計上することから改めて被害額を評価する必要はありません。

青年就農給付金

 就農に向けて研修をする者に支給される準備型の給付金は受給者の雑所得に、独立・自営に就農した者に支給される経営開始型の給付金は農業所得の収入金額になります。ただし、親が農業所得者である場合は受給者の雑所得になりますから留意してください。

農業経営基盤強化準備金

 認定農業者である担い手が一定の交付金を受けた場合、認定計画にそって農地や施設を取得できるように準備金を積立て、6年目にこれを取り崩し、 施設等を取得した時に圧縮損(一括償却のようなもの)を計上することで交付金等に課税せずに経営改善をはかろうとするものです。
 繰入れする場合には、所定の証明書類が必要になりますから事前に準備しておきましょう。

農機具等の計上漏れ

 農業は規模拡大につれ施設の増強を伴うものですが農業機械の計上もれ、(減価償却費も未計上)となっていることがあります。
 決算にあたって現物に名札を付けるがごとく総点検が必要です。
 なお、平成28年4月1日以後に取得した温室等の構築物の減価償却には定率法を選択できなくなりましたので留意してください。

たな卸し

 貯蔵のきく農産物や生産資材のたな卸しを伴った決算書は信頼性が高まるものです。
 年末の在庫数量とその程度、差損の原因、農薬等の期限切れなどを把握し正しい生産原価を計上しましょう。

必要経費になる消費税・相続費用

 納付した消費税、相続や遺贈によって取得した農業施設や賃貸物件の相続登記に係る登録免許税や登記費用は農業所得や不動産所得の計算上必要経費になりますから見落とさないようにしてください。

不動産所得の計算のしくみ

 不動産所得は土地建物の賃貸による所得ですから、賃貸物件と賃料等の条件を定めた「契約」がもとになります。
 賃料は契約どおり入金しているか、滞納はないか、賃料の増減について争いがないか、施設の不良個所はないか、賃料は適正か、自家用にしていないか、賃借人の不満はないか、など決算を機会に現場を踏査しておきましょう。
 さらに決算をして未収・前受になる地代家賃、修繕費や共済掛金などの未払・前払費用を計上して不動産所得の金額を確定します。なお、借主の都合で賃貸借契約が解除され、返済を免除されることになった建設協力金は地代家賃の補償になることから収入金額に計上する必要がありますから留意して下さい。