JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 消費税は10月から大きく変わるそうですが、農業や不動産管理事業における消費税はどのように変わりますか。事業者は新しい消費税制にどう対応すべきですか。生活者として消費税の負担を軽減するためにどんな点に留意したらよいでしょうか。

回答

いつの取引から新税率が適用されるのか

 資産の譲渡等(譲渡・貸付・役務の提供)については目的物を引渡した時、役務の提供を完了した時に行われたものとします。令和元年9月30日までに行われた資産の譲渡等又は課税仕入れに係る消費税は旧税率8%が、令和元年10月1日以後に行われた課税取引には新税率である標準税率10%と軽減税率8%が適用されます。平成31年3月31日までに契約するなどして旧8%の経過措置を受ける飲食料品の譲渡については軽減税率を適用します。

8%か10%かは、いつ誰が決めるのか

 軽減税率が適用される取引かどうかは、事業者が飲食料品を販売する時点で行います。事業者が飲食料品として販売したものは、顧客がそれ以外の目的で購入し、それ以外の目的で使用したとしても、その取引は飲食料品の譲渡に該当し軽減税率を適用することになります。つまり、販売する側の販売目的が何であるかによって税率が決まるということです。

適用税率は販売目的によって決まる

 たとえば、食用として販売した「かぼちゃの種」、「トウモロコシ」、「生きた魚介類」などは軽減税率(8%)の対象になりますが、家畜の餌にしたトウモロコシ、野菜の種、鑑賞用として販売された魚介類などは、食用ではないので標準税率(10%)が適用されるわけです。引き続き旧8%とする経過措置が設けられています。

旧8%が適用される不動産の賃料

 平成25年10月1日から平成31年3月31日までの間に締結した建物賃貸借契約(住宅を除く)で、令和元年10月1日をまたいで賃貸される家賃の消費税率は、この特例が適用されるのは、貸付期間と期間中の家賃の定めがあり、家主が賃料の変更を求めない契約内容になっている場合に限られていますから留意して下さい。

10月1日における前家賃、後家賃

 建物(住宅を除く)の賃貸借契約において翌月分の家賃を当月末までに支払うとした約定の、9月末に支払う10月分の家賃は10%の標準税率が適用され、当月分の家賃を翌月末までに支払う約定の、10月末に支払う9月分の家賃は旧8%の税率が適用されますから、契約書をよく確認しておきましょう。

インボイス制度は課税事業者が前提

 4年後(令和5年10月1日)から始まる適格請求書等保存方式(インボイス制度)のもとで農産物を販売する場合は、買い手から適格請求書等(軽減税率対象金額と事業者登録番号が記載された領収書・請求書など)の発行を求められます。インボイスを発行するためには消費税の課税事業者でなければなりません。免税事業者は課税事業者を選択して事業者登録をしなければなりません。

適格請求書等の発行が免除される取引

 農業者が生産物を農協の直売所へ出荷したり、卸売市場を通して販売する場合は適格請求書等を発行する義務が免除されます。卸売市場において出荷者から委託を受けた事業者が行う販売は、適格請求書等を交付することが困難な取引とされているからです。市場を通して生鮮食料品を購入した事業者は、卸売業者等が作成する一定の書類を保存することで仕入税額を控除することができます。農協の組合員と組合が農産物の無条件委託販売(売値や出荷先等の条件をつけずに販売を委託するもの)をし、かつ共同計算する場合は、適格請求書等を交付することが困難な取引とされ、組合員等から購入者に対する適格請求書等の交付義務が免除されます。

食用の農産物を生産する農業者の簡易課税

 消費税の軽減税率が適用される食用の農産物を生産する農業は、令和元年10月1日から第2種事業(みなし仕入率は80%)になりました。簡易課税制度では売上に適用される税率8%をもとにして、10%の仕入税額の計算が行われることから、従来より不利になることへ配慮したものです。なお、食用以外の農業は従来どおりの第三種事業ですから留意して下さい。

委託販売における課税売上高の計算

 農業者が委託販売によって資産を譲渡したときは、当該譲渡代金から販売手数料等を差引いた純額をもって売上高とする方式が認められていましたが、食用の農産物を販売する農業者については、複数税率が適用される令和元年10月1日の取引から総額方式(手数料等を差引かない)になりましたので留意して下さい。なお、花卉や畜産など食用以外の農産物を生産する農業者については、従来どおり純額方式によることができます。

消費税は消費者が負担するもの

 消費税の標準税率が8%から10%になったことで、消費者は家計と将来設計を見直しています。冗費や衝動買いを避け、必要なものを買う、キャッシュレス決済でのポイント還元などを積極的に活用するなど、軽減税率の恩恵に欲しようと賢い選択が始まったのです。それだけに、事業者は値上げの印象を持たれないようにと税込定価を据え置くことに腐心しがちです。品物は値段を下げれば売れるというものではありません。消費者は消費税を負担してでも欲しいものは購入すると言っています。事業者は消費者の選択肢を広げる品ぞろいを厳選して、収支を償う必要があります。

定価は自由裁量で決める

 50台の月極め駐車場で一ケ月一台5,000円(税込み)の賃料を据え置いた場合、本体価格は4,629円から4,545円へ、一台84円の値下げになり全体では年間50,400円の減収になります。これを5,000円(税別)とすると、月額5,400円から5,500円へ、一台100円の値上げでも手取りは5000円です。消費税率の引き上げ分を素直に定価に反映させると、5,092円(5,000円÷1,08×1,1)と92円の値上げか。お客様が負担する消費税とはいえ、定価の付け方でお客様の負担感は揺れ動き、商品の選別が一層進むことになるでしょう。