JA埼玉みずほ

金融機関コード 4859

税務相談

質問

 昨年の6月に父の相続によって農業と不動産の賃貸事業を承継しました。4ケ月以内の準確定申告と納税は済ませましたが、相続後の所得税と消費税はどのように申告するのでしょうか。なお、父は亡くなる2ケ月前に土地を譲渡しており8月に相続人が土地代金の決済を受けております。

回答

初めての確定申告

 個人の所得税の確定申告と納税は3月15日(第3期)が期限です。この申告は一年間の所得と税額を自ら計算し、年金や給与などから徴収された所得税額等、7月(第1期)と11月(第2期)に納付した予定納税額を精算して納税額を確定するものです。農業所得や不動産所得の計算上生じた損失は他の所得と損益通算をしたり、損失の繰越控除や繰戻しによる還付を受けることができます。申告した所得や税額に誤りを発見したときは期限内であれば訂正申告書を、申告期限の後であれば更正の請求をしたり修正申告書を提出することによって正しい納税額に直すことができます。したがって、確定申告は納税者の権利であり義務でもあると言われる由縁なのです。

相続後の所得は誰のもの

 所得税は毎年1月1日から12月31日までの一暦年を計算期間としています。一年間の収入金額からこれを得るための必要経費を控除して所得を計算します。したがって年の途中で死亡した人の申告と納税は、1月1日から相続開始の日までの期間になります。その翌日から12月31日までの所得は相続人のものですが、そのうち遺産分割協議が整うまでの間の所得は各相続人に帰属し、整ったあとの期間は当該収益財産を取得した相続人の所得になります。なお、遺言によって財産を取得した場合はもちろん、遺産分割協議において、収益財産を取得した者が相続開始時にさかのぼって使用収益することも可能です。

引渡し前の土地の譲渡はだれの所得?

 父は土地の売買契約を結ぶも、引渡し前に亡くなっていますから相続人は残代金の請求権を相続し、土地の引き渡し義務を負うことになります。したがって、当該土地は父と子のいずれかが譲渡したものとして申告することができます。父が売ったものとすると、父の準確定申告において譲渡税額を計算して納税することになります。この場合は土地の残代金は父の相続における未収金という財産になり、申告納税額は父の相続債務になります。子が売ったものとすると、子の確定申告において土地の譲渡所得(この場合は、譲渡した土地に係る相続税額を取得費加算として譲渡代金から控除することができます)と譲渡税額を申告納税します。

提出する申告書は青色か白色か

 相続人は被相続人の申告義務や納税義務を承継しますが、青色申告や事業専従者は自動的に承継することはありません。相続人が相続開始の年分から青色申告書を提出するためには、原則として相続開始の日の翌日から4ケ月以内(準確定申告書の提出期限内)に青色申告承認申請書を提出しておく必要があります。同時に青色専従者給与に関する届出書を提出すると青色事業専従者への給与の支払いを継続することが認められます。この時期の申請や届出を失念すると、父が亡くなった年は白色申告になりますから留意して下さい。

青色申告書と白色申告書の申告事務

 令和4年分から青色申告にする場合は、令和4年の3月15日までに青色申告承認申請書などを提出しなければなりません。青色申告書を提出する相続人には、記帳と帳簿書類の7年間の保存義務があります。青色専従者(事業者と生計を一にする親族で従事可能期間を通じてその2分の1を超えて専ら従事する者)へ給与を支払う際に、所得税を源泉徴収し、年末調整を行って税務署長や市町村長に給与支払報告書等の支払調書を提出します。

申告書が白色の場合

 青色申告についての必要な手続をしない場合は、 白色申告者になりますが記帳義務もありますから留意して下さい。事業専従者への給与は専従者控除として定額になります。専従者(その年を通じて6ケ月を超えて専ら従事する人)が配偶者の場合は年間86万円、その他の親族の場合は年間50万円以内とされ、当該控除額以上の事業等の所得が要件になります。

事業者が専従者の扶養親族になることも

 青色事業専従者や白色の専従者は他の所得者の扶養親族になることはできませんが、事業者自身の合計所得金額が48万円以下であれば、専従者の扶養親族になることができます。

消費税及び地方消費税の申告義務

 消費税の課税事業者であった父が消費税の申告書を提出せずに死亡した場合、相続人は所得税と同様に消費税の準確定申告書を提出して納税しなければなりません。また、課税事業者であった父から事業や不動産所得を生ずべき財産を相続した相続人は、事業収入や不動産収入が発生するとともに相続人に消費税の納税義務が生ずることがありますので確定申告の際は留意して下さい。

相続開始の翌年、翌々年の消費税の申告

 相続があった年の翌年又は翌々年の基準期間(令和2年、令和3年)における被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高の合計額が1000万円を超える場合は、相続があった年の翌年又は翌々年の納税義務が生じますから、消費税の申告納税(または還付申告)が必要になります。

父は廃業の届出、子は開業の届出

 農業と不動産を経営していた父は廃業の届出書を、父から事業を承継した子は開業の届出書を速やかに提出するようにしてください。